2014年4月28日月曜日

ドゥルージバ・キエフ報告会

ドゥルージバ・キエフ報告会 (http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~ai369/kief.html)

これは、10月14日(日)に山口グループの例会で行われたものをテープ興ししたものです。固有名詞等聞き取れなかった部分は(?)や(不明)としてあります。ご容赦ください。
 1986年にチェルノブイリから煙といっしょに放出された放射性物質は上空1500メートルまで舞い上がりヨーロッパをはじめ世界中に広がりました。それは火事が消されるまで数日間続いていました。原発で働いていた人びとは大量の放射線を浴びました。何人かの人は短い間になくなりました。他の人は急性放射線障害になりました。事故の後数千人の人とチェルノブイリ周辺に住んでいた人の健康状態は非常に悪くなりました。多くの人が治療のむづかしい病気にかかりました。特にこどもの体は放射線の影響をうけやすいので重い病気の子どもの数は特に最近急速に増えてきました。それは11年間で体の中に放射性物質がたまってきたからです。事故直後放射能は空気や水といっしょに体のなかに入りましたが、その後食べ物といっしょにすこしづつ入り込んで害を与えています。
  日本は世界で唯一の被爆国ですから、他の国の人々より放射能の恐ろしさについてよく理解できるでしょう。チェルノブイリ事故の後、核兵器だけでなく原発などの原子力施設も人民にとって危険であることが明らかになりました。広島と長崎で亡くなった人の数は、とても多いことを知っています。しかし、チェルノブイリ原発から放出された放射能は広島型原爆の500個分以上のものなので、長い間数百万人の人々にとても恐ろしい影響を与えつづけるでしょう。チェルノブイリ事故の影響が及んだのはヨーロッパだけではありませんでした。チェルノブイリの放射性物質は北アメリカ、アフリカ、オーストラリアに飛びました。極東と中近東にも原子力の恐怖と が届きました。ご存知の通り、1986年5月日本でもヨウソ131、セシウム137などの放射性物質によって食品が汚染されました。もっとも恐ろしいことは、大阪でお湯の中に放射性物質が発見されたことです。(不明)一言でいえばチェルノブイリ原発によって放射された放射能は生物種としての人間の死滅の恐れについての全世界に対する最後の警告なのです。
  ウクライナ国民の健康状態はどうしようもなく悪化しています。チェルノブイリ事故の影響だけによって全人口の死亡率は2.3倍、14未満の子どもは2.4倍に増加しました。 1987年から1996年にかけて大人や未成年者は血液循環系の病気%以上、悪性腫瘍13%、消化器系の病気2。1%、14歳未満の子供たちの場合は、先天性発育異常21%、悪性腫瘍は7。7%、うちリンパ造血系4。1%です。この6年間でウクライナの人口は115万人自然減少しました。この数字は今世紀末までに倍増すると予測されている。労働可能な年齢で亡くなった人の内、81%が男性です。コレラやペストなどの伝染病や戦争のない時にこの状態なのです。ウクライナでは成人障害者の数は130万人、児童障害者の数は13万5千人に増えました。いうまでもなくこのような国民の健康の悪化はチェルノブイリ事故の影響と密接な関係があります。ウクライナの全体に、事故処理員と彼らから生まれた2万人の子供たちが住んでいます。彼らはすべて保健機関に登録されています。11年前、10歳から15歳であった人たちからも子どもたちが生まれています。被災者の妊婦も51%は貧血症です。毎年5万人の妊婦は流産もしくは死産によって胎児を失います。ウクライナ安全保健保障委員会(?)によって出産前の母子の血液中の放射性物質は同じであることが初めて解明されました。つまり天然の牢壁(?)である胎盤が胎児を放射線から守っていないわけです。その後、子どもは母乳から放射性物質を体内に取り込みます。公式のデータによれば、小学校の1年生の内、10%は知恵遅れ、呼吸器の慢性疾患、消化器の慢性炎症、尿道炎、甲状腺の病気です。
  チェルノブイリ事故当時0歳から18歳であった人のうち1996年までに911人が甲状腺ガンになりました。その重い病気は事故の前にはめったに病気になりませんでした。甲状腺の異常は、機能障害、重い場合にはクレチン病を引き起こすことが知られています。ウクライナ住民が受けた外部被爆の他に、水による内部被爆があります。ドニエプル川の流域で放射能に汚染された水を3500万人以上の人が使っています。それはチェルノブイリの隣に ぷりてぃんつい(不明) という川があります。とても汚染された地域ですから水といっしょに放射性物質はその川にはいってぷりてぃんついはドニエプルにそそいでいます。多くの人がその水を使って体内に放射性物質を蓄積しています。しかし の量の被爆も神経系の病気をひきおこしてます。惨事が起きた最初の日から事故処理員たち に心理状態の異変が認められました。脳が破壊されニューロンが死にました。体の病気が空想しんくう系(不明)の不調をもたらします。病理解剖検査によって脳の萎縮が確認され、へいせいの量も脳の被爆によって異変が起こっているのが電子顕微鏡をもちいて証明されました。もっともよくみられる症状は記憶力の減退と知能の低下です。被爆の脳のがいはくしつげんしょう(不明)は、呼吸器系、循環系、免疫系、内分泌系の病気の原因になります。4号炉の下でトンネルを掘っていた42人の炭鉱夫には気管の異変がみられました。事故後80.7%の子ども達に歯の病気と歯肉炎が見られます。6歳の子どもでは歯肉炎は35%、14、5歳の子どもの場合では88.4%です。1歳の子どもに歯がはえていないことがあります。毎年500人の子どもが白血病で医師にかかります。いま大人や子どもの白血病患者は5000人です。1980年から1996年の間に血液病と血液造血器官の病気は、被災者の大人と未成年者で3.9倍、児童で2.7倍増加しました。悪性腫瘍の発生率の増加は大人と未成年者で2.2倍、子どもで3.6倍です。これがチェルノブイリ事故の影響であることは何ら疑う余地はありません。10年間で一級障害者の増加率は事故処理員で24.2倍、疎開させられた人と移住者(高濃度汚染地区の住人)で4.6倍、汚染地域の住人(中レベルの住人)で1.4倍増加しましたが、このことも事故の影響を示しています。この恐ろしい、しかも公式のデータを国際原子力機関は認めたがらないのです。10年たって彼等ははじめて甲状腺がんの増加がチェルノブイリ事故の結果であることを認めました。私たちの地球のいたるところに原発があります。原子力の専門家たちは他の主要なエネルギー源を利用しようという考えを否定するためにできるだけの努力をしています。ウクライナの元エネルギー経済電波大臣***(不明)は著書の中で次のように書いています。「私は原子力エネルギー産業と闘う人たちを助けたいと強く願っていました。これまで原子力の専門家たちは原発はコストが安く安全でエコロジー的に無害であるという神話を唱えてきました。これは全部嘘です。原子力エネルギー産業は核兵器産業のテクノロジーの延長です。人間を殺す為に考え出されたものが人間に利益をもたらすはずがありません。予言者は故郷に受け入れられぬものです。ヘレン・カルデコットは1978年の「核の恐怖」という本の中で既に原子力エネルギーと核兵器産業が突然変異をもたらす二つの主な放射線源であることを示しました。70年代すでに原子力エネルギー産業はコストが高く、危険でエコロジー的に有害であるということがいわれていました。どうして今でも技術者たちはそれがわからないのでしょうか。世界の有力者たちはもし放射性廃棄物をどこにどのように保存すればよいのかわからないというのなら、いったい何をかんがえているのでしょうか。世界銀行の専門家のサンペインによれば、コールベル放射性廃棄物貯蔵所の建設費は2、3億ドルと見積もられています。放射性廃棄物を防御するための安全な設計はまだありません。原発の核燃料の在庫はあと30年分あると計算されています。しかし、放射性廃棄物は永遠にのこるもので、プルトニウム239の半減期は24500年です。それをしっていながらどうして原子力エネルギーの開発をすすめることができるのでしょうか。放射性廃棄物は自然、人間と将来にとって生死にかかわるものです。
  1946年から1982年にかけて60万個のコンテナが海洋投棄されました。ソ連だけでも1959年から個体液体の放射性廃棄物250万キュリーと原子力潜水艦、破氷船の原子炉を海洋投棄されました。その大部分はカラ海と極東地域に捨てられたのです。その結果海産物は汚染されて危険なものになっています。放射性廃棄物はわれわれから将来の世代への悪しき遺産です。その遺産はすでに存在していて、それをなくしてしまうことは誰にもできません。1989年のデータによれば、立入禁止区域に約1億トンの放射性廃棄物が貯蔵されています。放射性廃棄物の一時的貯蔵所のあるところはいまだにはっきりわかっていません。航空写真をとってもわかりませんでした。ほうい核のあつまり(不明)が日のいづる国と全世界からいわれている日本をほろぼそうとしました。地獄からとりだした放射能の混合物が自然が豊かで美しいウクライナに降り積もり、半世紀にも渉ってのこっていくのです。ですから日本の国民とウクライナの国民は二つの悲劇によって兄弟となったといえるでしょう。ですから私たちは被爆した人、汚染された民族をいっよに救わなければなりません。日本の科学もウクライナの科学も苦いとはいえ大きい経験を積んできているのですから。いまウクライナの医師たちは病気になった子ども達を治療するためにできるだけのことをしています。しかし今ウクライナでは、経済状態は非常に悪く、失業率も高いです。ウクライナの法律によって勤労者の給料の10%は国家予算に出します。その額は被災者の保養設備に使います。しかし、給料は安く、そのため十分な額ではありません。いま一番大事な問題は、病気の子どもたちの健康状態、すべてのこどもたちのけんと(不明)の検査と予防です。ウクライナの専門家の予測によって将来甲状腺ガンになる子ども達の数は、150万人になるといわれています。チェルノブイリ原発から放出された放射性物質の影響は30世代までのこるという指摘もあります。
  あなたがたはそのビデオをみてからすこし事故のあとの状態についてわかったにちがいありません。その最初の日は、多くの人々はチェルノブイリ事故の正確なデータを知りませんでした。たとえば5月1日に多くの人々はメーデーにいきました。そして5月8日にキエフで自転車の国際大会が開かれました。それもキエフのおおくの住民は観戦にいきました。天気が良く野には花が咲いていました。 多くの人々は子どもと一日中散歩しました。その結果大きな被害がでました。私たちは、はじめて事故の規模をスウェーデンの放送から知りました。ソ連の政府はそれについて事故のあと90日以上たって知らせました。ウクライナ保健省大臣は毎日住民に次のようにいいました。「ぬれた布を使ってそうじしてください。まどをあけてもいいです。散歩してもいいです。あまり危険ではありません。」その結果人々は信じて大きい被害を受けました。キエフの子どもたちは5月末までキエフにたくさんいました。汽車と飛行機の切符を使うことができませんでした。多くの人はキエフからすぐにでることはできませんでした。

2014年4月27日日曜日

【京都大学原子炉実験所資料】 チェルノブイリ原発事故によるベラルーシでの遺伝的影響

【京都大学原子炉実験所資料】

チェルノブイリ原発事故によるベラルーシでの遺伝的影響


ゲンナジー・ラズューク,佐藤幸男*,ドミトリ・ニコラエフ,

イリーナ・ノビコワ

ベラルーシ遺伝疾患研究所(ベラルーシ),*広島文化女子短期大学

 

 

チェルノブイリ原発事故で放出された放射能により,ベラルーシ,ロシア,ウクライナの数多くの住民が被曝し,その影響が遺伝的な損傷,とりわけ染色体の異常として現れていることは多くの研究結果によって示されている1,4,6.染色体異常の増加は,不安定型と安定型,また染色体型と染色分体型といった,いずれのタイプの異常にも認められている4,7,8.(放射線被曝に特徴的な)2動原体ならびに環状染色体といった異常とともに,化学的変異原にも共通するその他の染色体異常の増加が認められていること6,9,また実際に観察された染色体異常の頻度が被曝量推定値から計算されるものより大きいこと4,5が明らかとなっている.これらの事実は,チェルノブイリ事故被災者に認められる染色体異常は,被曝の影響に加えて他のいろいろな変異原によって引き起こされているか,または,物理的な手法に基づく被曝量が過小に評価されている可能性を示している.

染色体異常の観察結果が,生体に対する変異影響を測るための生物学的尺度として有効であることは言うまでもない.しかしながら,染色体に基づく方法によっては,通常の末梢血リンパ球の観察ではもちろん,たとえ性細胞の異常を観察したとしても,実際の遺伝的な影響を検出することは困難である.自然流産率,周産期死亡率といった遺伝的損傷の経年変化,先天性障害児発生率の経年変化といった研究が,放射線の影響を含め,遺伝的変異原の影響を調べるもっとも確かな方法である.このことは,遺伝子の変異から先天性障害をもつ子どもの誕生までの間には,(遺伝子の選別,着床前や胎児期での死亡といった)数多くの事象がつながっているという事実と関連している.そうした事象を直接観察することはほとんど不可能であり,そのことがさまざまな不確定性をもたらしている.最終的な結果を直接観察する方法のみが,それなりの欠点はあったとしても,遺伝的損傷に関する実際の情報を示すことができる.本報告では,合法的流産胎児の形成障害と,新生児・胎児における先天性障害の観察を基に,チェルノブイリ原発事故がベラルーシの住民にもたらした遺伝的障害の大きさを明らかにする.

合法的流産胎児の形成障害

われわれは,放射能汚染管理地域とミンスク市(対照グループ)における,合法的流産胎児の形成障害頻度の観察を行なっている.汚染管理地域とは,ゴメリ州とモギリョフ州のセシウム137による汚染が15Ci/km2以上の地域である.ベラルーシ先天性疾患研究所では,胎齢5週から12週の間に掻爬された胎児を調べている.検査は,ステレオ顕微鏡下で胎児を解剖しながら行なわれ,必要であれば,病理標本を作成する.すべての胎児の胎齢は,カーネギー研究所方式で決定されている.掻爬にともなっていくつかの臓器が検査不能になることもあるので,形成障害の頻度は,検査された胎児数ではなく,検査された臓器数に基づいて決定される.また,胎児の形成過程を考えると,いくつかの障害はある胎齢以降にしか観察されないので,そうした障害の頻度は,その胎齢に達した胎児のみを考慮する.検査で発見した形成異常はすべて記録している.これまでに,3万3376例の胎児を検査し,その中には(1986年後期以降の)汚染管理地域の2701例が含まれている.

検査結果の一部を表1に示す.汚染管理地域での形成障害の頻度を,チェルノブイリ事故前6年間および以降11年間のミンスク市と比べると,汚染管理地域の値はミンスク市のどちらの値よりもかなり大きい.また,汚染管理地域において,1986年から1995年の平均値(7.21%)に比べ,1992年に大きな値(9.87%)があったことを指摘しておく3.

中枢神経系異常や(多指症や肋骨縮体といった)新たな突然変異の寄与が大きい障害など,放射線被曝に特徴的と考えられている部位において有意な増加が認められているわけではない.しかしながら,それらの増加傾向はかなりはっきりしたもので,とりわけ肋骨縮体において認められる.

表1 人工流産胎児の形成障害頻度

 
調査地区
ミンスク市
放射能管理地域
1980-1985
1986-1996
1986-1995
観察胎児数
10,168
20,507
2,701
形成障害頻度 (%)
5.60
4.90
7.21*
うちわけ:   
中枢神経系異常
0.32
0.53
0.54
多指症
0.63
0.53
0.79
四肢欠損
0.07
0.10
0.28


新生児の先天性障害

ベラルーシ共和国では,新生児の先天性障害に関する国家規模でのモニタリングプログラムが1979年から行なわれている.医療施設のランクにかかわらず,すべての医療施設において周産期児(分娩前後の胎児・新生児)の先天性障害が診断・登録されている.それぞれの症例については,診断にあたった医師が登録用紙に記入し,その用紙がミンスクの遺伝センターに送られる.先天性疾患研究所のスタッフが,定期的な地域巡回か,センターにおける家族面談の際に,記載のチェックを行なっている.新生児,および胎児診断後に人工流産された胎児に観察された障害は,無脳症,重度脊椎披裂,口唇・口蓋裂,多指症,重度四肢欠損,食道閉塞,肛門閉塞,ダウン症,および複合障害に分類されて登録される.セシウム137の汚染レベル別の結果を表2に示す.セシウム137の汚染レベルが1Ci/km2以下の30地区を対照グループに選んである.

表2 ベラルーシの国家モニタリングにおける先天性障害頻度(1982~1995)

(上段:新生児1000人当り頻度,下段:観察数)


障害の分類
セシウム137汚染地域
対照地域
(30地区)
15 Ci/km2以上
(17地区)
1 Ci/km2以上
(54地区)
1982-1985
1987-1995
1982-1985
1987-1995
1982-1985
1987-1995
無脳症
0.28
11
0.44
26
0.24
48
0.64*
226
0.35
23
0.49
63
脊椎披裂
0.58
23
0.89
53
0.67
132
0.95*
335
0.64
42
0.94*
120
唇口蓋裂
0.63
25
0.94
56
0.70
137
0.92*
324
0.50
33
0.95*
121
多指症
0.10
4
1.02*
61
0.30
60
0.66*
232
0.26
17
0.52*
66
四肢欠損
0.15
6
0.49*
29
0.18
36
0.35*
123
0.20
13
0.20
26
食道閉塞
0.08
3
0.08
5
0.12
23
0.15
53
0.11
7
0.14
18
肛門閉塞
0.05
2
0.08
5
0.08
16
0.10
35
0.03
2
0.06
8
ダウン症
0.91
36
0.84
50
0.86
170
1.03
362
0.63
41
0.92*
117
複合障害
1.04
41
2.30*
137
1.41
277
2.09*
733
1.18
77
1.61*
205
合計
3.87
151
7.07*
422
4.57
899
6.90*
2423
3.90
255
5.84*
744
事故後の頻度増加(%)
83
51
50
*:1982-1985年と1987-1995年を比べると有意に増加 (p - 0.05).

 

セシウム汚染地域と対照地域とも,チェルノブイリ事故後に先天性障害頻度が増加していることは明らかである.また,セシウム汚染レベルが大きくなるほど,頻度の増加が大きくなっている.対照地域では50%の増加であるのに対し,15Ci/km2以上の地域は83%の増加である.対照地域における頻度増加が放射線被曝によるものではないことは確かであろう.一方,汚染地域では,対照地域を越える増加が,54地区では1%(51-50),17地区での33%(83-50)と汚染レベルに応じて認められている.

こうした増加をもたらす原因として考えられるのは以下の4つである.

チェルノブイリ事故後の先天性障害の増加は,真の増加ではなく,単に見せかけのものと考えられる.つまり,登録がより完全になったこと,言い換えると,被災地域における問題への関心が増加した結果である.
放射能汚染による胎内被曝にともなう胎児への直接的な被曝影響.
どちらかの親の生殖線被曝にともなう突然変異による遺伝的影響.
チェルノブイリ事故を含めたネガティブな要因(放射線のほか,化学汚染,栄養悪化,アルコールなど)の複合的影響.
最初の見せかけ説は,ベラルーシにおける国家モニタリングを基に,以下の理由で否定されよう.第1に,厳密に診断された先天性障害のみを考慮していること,第2に,先天性疾患研究所のスタッフによって診断の正確さは常にチェックされてきたこと,第3に,チェルノブイリ事故前はさまざまな地区においてほぼ同じ頻度であったこと,最後に,先天性障害頻度と汚染レベルに相関性が認められることである.

胎内被曝原因説も,放射線感受性の大きい胎児期での胎児の被曝量がしきい値以下であったことを考えると否定される.先天性障害児の母親のうち,チェルノブイリ事故がおきてから妊娠第1トリメスター(妊娠期間を3つに分けた最初の時期)の終わりまでに55ミリシーベルト以上の被曝を受けたものはいない.放射線被曝に最も特徴的な先天性障害である,中枢神経系欠陥の形成時期は,第1トリメスターに含まれている.国家モニタリングの調査結果(表1と表2)は,中枢神経系障害の有意な増加を示していない.

ベラルーシにおいて先天性障害の増加をもたらしている原因として最も考えられることは,慢性的な被曝またはネガティブ要因の複合的な影響による,突然変異レベルの増加である.以下の事実も間接的にこれを示している.

チェルノブイリ事故で被曝したベラルーシ,ウクライナ,ロシアの人々の末梢血白血球において突然変異レベルが増加している2,5,8.
15Ci/km2以上の汚染地域での増加が大きく,なかでも,新しい突然変異が大きく寄与する障害(多指症,四肢欠損,複合障害)が増加している.ただし,新しい突然変異のうち,ダウン症といったトリソミーの増加は認められていない.
先天性障害の増加とチェルノブイリ事故による被曝との関係を調べるため,ゴメリ州とモギリョフ州における(大きな都市は除いた)データを,放射能汚染については安全と考えられるビテプスク州のデータを対照としながら解析してみた.被曝量は,放射線医学研究所のデータで,18歳以上の住民について,事故発生以来の外部被曝と内部被曝を合わせた平均被曝量である.

解析結果を表3に示す.対照地域に比べ,汚染地域での先天性障害頻度の増加1%当りの平均被曝量は,モギリョフ州では0.20ミリシーベルト,ゴメリ州では0.31ミリシーベルトである.これらの値を,放射線被曝による遺伝的影響の倍加線量に換算すると0.02~0.03シーベルトとなり,国際放射線防護委員会(ICRP)や国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が採用している倍加線量値の1シーベルトに比べ極めて小さな値となる.この結果は,放射線被曝にともなう遺伝的影響が従来考えられてきたより大きいものであるか,または,解析に用いた被曝量の値が実際の被曝よりかなり小さく評価されていることを示唆している.

表3 先天性障害頻度と平均被曝量の比較(農村地区,18歳以上)


地域
新生児1000人当り
先天性障害頻度
チェルノブイリ事故
による平均被曝量
(ミリシーベルト)
障害頻度増加1%
当りの平均被曝量
(ミリシーベルト/%)
1982-85
1987-95
1986-94
ゴメリ州
4.06 0.39
7.45 0.24
13.40
0.31
事故後の増加: 83 %
モギリョフ州
3.50 0.53
6.41 0.30
8.82
0.20
事故後の増加: 83 %
ビテプスク州
3.60 0.63
5.04 0.27
0.24
-
事故後の増加: 40 %

 

まとめ

われわれの調査結果は,ベラルーシの住民において胎児異常の頻度が増加していることを示している.それらは,人工流産胎児の形成障害および新生児の先天性障害として現われている.そうした増加の原因はまだ断定されていない.しかしながら,胎児障害の頻度と,放射能汚染レベルや平均被曝量との間に認められる相関性,ならびに新たな突然変異が寄与する先天性障害の増加といったことは,先天性障害頻度の経年変化において,放射線被曝が何らかの影響を与えていることを示している.

 

文献

Lazjuk G.I. et al. Cytogenetic effects of additional exposure to low levels of ionizing radiation. Zdravookhraneniye Belorussii, 6: 38-41, 1990 (in Russian).
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Sevankaev A.V. et al. Chromosome aberrations in Lymphocytes of Residents of Areas Contaminated by Radioactive Discharges from the Chernobyl Accident. Radiat.Protect.Dosim. 1995, V.58, N.4, P. 247-254..
Pilinskaya M.A., et al., Cytogenetic Indicator of Irradiation among the People Suffering from Affected Factors by the Chernobyl Accident, Tsitologiya i genetika, 1992, V.26, N.6, P.6-9 (in Russian).
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J.R. Lazutka. Chromosome Aberrations and Rogue Cells in Lymphocytes of Chernobyl Clean-up Workers. Mutat.Res. 1996, V.350, P. 315-329

2014年3月31日月曜日

木下黄太氏ウクライナ報告 in 東京 聴講メモ

木下黄太氏ウクライナ報告 in 東京(2013.11.25)を聴講しながらメモしたものです。実際の講演は、編集途中のウクライナで撮影したビデオ画像を紹介しながらのもので、言葉だけでは説明できない内容があります。

ウクライナに行ったのは、 東京とキエフの土壌汚染が同等であるため⇒事故数年後、キエフは Cs137で460Bq/kg、134+137の推定700Bq/kg。東京の40か所位の平均で800Bq/kg(23区)。都の実測値は790Bq/kg(新宿)

国の水準が日本とかなり違い、低い。食糧が豊かだが、国力は 90年当初のハンガリー程度。日本の医療水準などをそのままあてはめても何もわからない。ウクライナで、1年2年しても何も起こらなかったといういうが、判らなかっただけだろう。

ウクライナでは人口が5000万人位から500万人減少(移住200万を除く)。女性の人口学者「こんなに減少するのはあり得ないこと。どう対応したらよいか分からない」。被曝人口 、日本では2000万~3000万、ウクライナは多くてもその1/5でこの状態。

『みどりの力』(廃炉を勧めた市民グループ)のリーダ。 実際に廃炉作業をしていて、作業員をどうしていくかは、大変なことだ。 放射能に強い人と、弱い人が居て、弱い人は除外する。弱い人と強い人は、7:3の割合。 遺伝子で判別できる。

キエフの普通の家庭を訪問。主人、肺に炎症、心臓も悪い。20年後くらいから体調が悪化。50代に見えるが、年下の42,3だった 。老化が進んでいる。婦人は38,9歳、40後半に見える。事故後5,6年から体調不良。それをどう誤魔化していくのかという暮らし。

訪問した家庭は、ぎりぎりの生活レベルに見えるが、何とか汚染の少ない地方の食べ物を選んで生活。キエフの水源はチェルノブイリに近い方にあり、飲料水は危険という認識を持つ。(キエフは自給自足の農村とは異り、食材産地に拘る人が普通にいる。マスクはつけない)

夫妻の娘さんも心臓に異常で、運動ができない。半分くらいの子どもが運動出来ない。体調が悪く、早く死ぬ人は早く死ぬということが起こっているのだろう。 突然死ぬという人もいるが、体調不良が当たり前という状態になっている。

夫妻、中学生の頃、事故3週間後に政府の指示で、試験がある上級生以外、南方の汚染がないエリアへ逃げた。 戻って来たのは新学期の始まる前、夏の終わり。非常に国力が乏しいこの国で、セシウムが東京と異ならないキエフの子ども達を3週間後に逃がしていた。東京は?

『チェルブイリの長い影』著者オリハ・V・ホリシナ氏は軍の医学研究所副所長で国の立場だが、国より被曝の概念を多く持つ女性の目でまとめている。闘う人バンダジェフスキーと異なり、体制側にいてバランスを図っている。そいう人と話し ても、この情況はやはり駄目だ。

ウクライナでは、道路沿いに疾病が多く見られ、道路ごとに白血病、癌といった異なる特徴が見られる。

キエフ市内は除染を徹底的に実施した。木を植え換え、土壌をとれない所は上に土を入れた。夏に徹底して除染 した。・・・東京は、何も実施していない。

「ウクライナを支援した日本医師が自国でなぜウソを言う?もう何年すれば、実際に健康被害が出て明らかになるだろう。」実際に体調不良が出ているから、健康被害があるのは常識。キエフで健康被害が起こっていることは事実。

お金があったらもっと逃げた人が多かっただろうという印象。生活基盤が築けない。日本だったら、西日本に行けば食っていける。ウクライナではそれができない。キエフでは、3週間後に避難して、もどって、また被曝した。東京は避難できるのに、大丈夫だと、何もしない。

東葛と同レベルのイワンコフの病院、種々の疾病が次々と起きてる。年に何回も入院。被曝が原因としか考えられないと言う。キエフの病院では、疾病患者、子どもの突然死が増えている。ここ何年か目の疾病も増えている。遺伝的な要因、慢性的な被曝という認識がある。

甲状腺検査についてホリシナ博士は、異常がある子は週に一回でもよい。半年に一回~何もなくても年に一回は当たり前。医療レベルは低いが、種々考えながらの治療現場は女医が活躍。日本もそういう経験を踏まえないと困るだろう。日本の医者は新しい事態に対応できない。



2014年3月25日火曜日

被曝線量をねつ造して帰還促進する内閣府原子力被災者生活支援チーム

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除予定地域で昨年実施された個人線量計による被ばく線量調査について、内閣府原子力被災者生活支援チームが当初予定していた結果の公表を見送り、屋外にいる時間を変えるなどデータをねつ造。

【引用】
福島原発事故:被ばく線量を公表せず 想定外の高い数値で
毎日新聞 2014年03月25日

◇内閣府のチーム、福島の3カ所

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除予定地域で昨年実施された個人線量計による被ばく線量調査について、内閣府原子力被災者生活支援チームが当初予定していた結果の公表を見送っていたことが24日、分かった。関係者によると、当初の想定より高い数値が出たため、住民の帰還を妨げかねないとの意見が強まったという。調査結果は、住民が通常屋外にいる時間を短く見積もることなどで線量を低く推計し直され、近く福島県の関係自治体に示す見込み。調査結果を隠したうえ、操作した疑いがあり、住民帰還を強引に促す手法が批判を集めそうだ。

 毎日新聞は支援チームが昨年11月に作成した公表用資料(現在も未公表)などを入手した。これらによると、新型の個人線量計による測定調査は、支援チームの要請を受けた日本原子力研究開発機構(原子力機構)と放射線医学総合研究所(放医研)が昨年9月、田村市都路(みやこじ)地区▽川内村▽飯舘村の3カ所(いずれも福島県内)で実施した。

 それぞれ数日間にわたって、学校や民家など建物の内外のほか、農地や山林などでアクリル板の箱に個人線量計を設置するなどして線量を測定。データは昨年10月半ば、支援チームに提出された。一般的に被ばく線量は航空機モニタリングで測定する空間線量からの推計値が使われており、支援チームはこれと比較するため、生活パターンを屋外8時間・屋内16時間とするなどの条件を合わせ、農業や林業など職業別に年間被ばく線量を推計した。

 関係者によると、支援チームは当初、福島県内の自治体が住民に配布した従来型の個人線量計の数値が、航空機モニタリングに比べて大幅に低かったことに着目。

 関係省庁の担当者のほか、有識者や福島の地元関係者らが参加する原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」が昨年9〜11月に開いた会合で調査結果を公表し、被ばく線量の低さを強調する方針だった。

 しかし、特に大半が1ミリシーベルト台になると想定していた川内村の推計値が2.6〜6.6ミリシーベルトと高かったため、関係者間で「インパクトが大きい」「自治体への十分な説明が必要」などの意見が交わされ、検討チームでの公表を見送ったという。

2014年3月17日月曜日

子どもや妊婦の被爆対策を訴え ヘレン・カルディコット医師広島で福島原発事故講演

子どもや妊婦の被爆対策を訴え ヘレン・カルディコット医師広島で福島原発事故講演 3月16日 中國新聞



 東京電力福島第一原発事故による放射線の影響をテーマにした講演会が15日、広島中区のアステールプラザであった。放射線被曝に詳しいオーストラリア出身の小児科医ヘレン・カルディコット博士(75)が講師となり、低線量被曝による子どもの健康被害に警鐘を鳴らした。
 カルディコットさんは欧州連合(EU)の内閣府が2月に発表した放射性物質の濃度を示す世界地図を紹介し、福島を中心に汚染が広がっていると指摘。「子どもや胎児は低線量でも被曝すると、大人より影響を受けやすい」などと強調し、子どもや妊婦への対応の必要性を訴えた。
 福島の事故発生から3年を迎えたのに合わせ、被爆地で核問題の議論を深めようと、平和活動や環境保全に取り組む米国の財団が主催。市民ら約200人が参加した。廿日市市の無職中谷悦子さん(66)は「知らない情報が多く驚いた。政府は国民の立場で対策を考えてほしい」と話していた。

2014年3月5日水曜日

福島第一原発建屋周辺の地下水は約100メートルほど離れた海水の潮位変動を受けるため、建屋内の汚染水が地下水に混じる可能性があり得る

焦点:汚染水問題で危機深まる福島第1原発、海洋放出にも高い壁」

REUTER:2013年 08月 22日 16:15 JST

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[東京/いわき市(福島県) 22日 ロイター] - 深刻化する福島第1原子力発電所の放射能汚染水問題をめぐり、東京電力(9501.T: 株価ニュースレポート)への新たな不信が広がっている。
海に放射性物質を漏らした東電に対して漁業者の反発は強く、事態打開の鍵を握る非汚染地下水や低濃度水の海洋放出も難航が予想される。汚染水処理は同原発の廃炉作業にとって最大の障害となっているが、抜本策の展望が開けないまま、一段と危機の度合いを深めつつある。
<海に漏れた汚染水、漁業者の不信招く>
廃炉作業が進む福島第1原発では、地下水流入により1日約400トンのペースで汚染水が増加し、ほぼ同量を地上のタンクに収容し続けてきた。4月には地下貯水槽からの汚染水漏れもあり、6月までにこの分も全て地上タンクに移送した。
その結果、保管している汚染水は約33万トンにまで蓄積。総容量が約39万トン(8月中旬時点)にとどまっているタンクの増強は避けられず、東電は2015年中頃には70万トン、2016年度中には80万トンに増やす計画だ。
タンクでの保管とともに、東電は地下水を原子炉建屋に入る前にくみ上げ、「バイパス」を通じて海に放出することで、汚染水の発生量そのものを低減させる計画も打ち出した。この作戦で海に流すのは汚染前の水。地元の漁業者の理解が得られれば、汚染水問題の解決へ大きく前進するはずだった。
しかし、その道を自ら閉ざしたのは東電側、という声がいま地元の漁業者に広がりつつある。「地下水バイパスは、県漁連執行部としては協力すべきだと考えている。何とか漁業者の理解を得ようと努力してきた」と福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長は話す。「漁業者の間で汚染水と(汚染前の)地下水の区別がつき始めていた。ただ、東電は汚染水を海に漏らさないとずっと言っていたのに、漏れてしまった。これは危機的でしょうというのが漁業者の受け止めだ」。
汚染水の海への漏えいを否定し続けた挙げ句に、東電は参院選の投開票日翌日(7月22日)にようやくその実態を認めた。地元の協力姿勢に水を差す、東電の不透明な対応。漁業者の反発を受け、汚染前の水を海に流す作戦は実施できていない。
一方、汚染前の水だけでなく、汚染濃度を許容レベルまで低めた水を海洋に放出するという方法も、同様に立ち往生する可能性がある。汚染水を貯蔵するタンクは無尽蔵には作れない。汚染水から除去可能な放射性物質を取り除く同作戦について、原子力規制委員会の田中俊一委員長が記者会見で必要性に言及し、茂木敏充経産相も低濃度汚染水を放出する方針を示唆するなど、政府関係者による実施への地ならしは始まってる。
しかし、漁業者にとって、低濃度水の放出はどこまで認められるのか。福島県漁連の野崎会長は、「汚染された水の意図的な海洋流出は止めてほしい」との立場だ。放出する水は放射能濃度が十分に低いものが対象になるとして、政府は今後、漁業者に理解を求めるとみられるが、野崎氏は「国際機関の評価をもらわないと駄目だろう」と厳しい条件を付ける。
海洋への放出がままならない中、福島第1原発の汚染水処理は、地上タンクでの保管に頼らざるを得ないのが現状だ。しかし、今月20日には、頼みのタンクから約300トンの汚染水が漏れていたと東電は発表。漏れた汚染水から、ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり8000万ベクレルと極めて高い濃度が検出された。
タンク漏れを発表した当初、東電は汚染水が海に流れた可能性について否定的だったが、21日には「汚染水が海に流れた可能性は否定できない」との見解を示した。漏れた汚染水は排水溝を通じて外洋に流れた可能性があるという。
問題となったタンクは、鉄の胴体部の接合部を樹脂製のパッキンで挟んでボルトで締めて組み立てる構造。接合部を溶接するタイプの方が保管性能が高いが、組み立て型は「早期に建設できる」(原子力・立地本の尾野昌之・本部長代理)というメリットがあるため、最近まで増設の大半を占めてきた。
この組み立て型について、メーカーが保証するパッキンの耐用年数は5年。タンクの運用開始から既に2年近くになるが、3年後にはパッキンなどタンク部品の交換や修理が大きな課題となる可能性がある。東電は今後増やすタンクは溶接型を主体とする方針だが、約1060基あるタンクのうち組み立て型タンクは約350基あり、早期の抜本的な入れ替えは困難だ。
<議論わかれる発生ルート、つかめぬ実態>
福島原発の汚染水処理に効果的な抜本策が取れない背景には、高い放射線量が障害となり原子炉建屋内に人が入れず、そこに溜まっている汚染水の状況やその発生メカニズムもいまだに正確に把握できていない、という事情もある。 
汚染水が発生するメカニズムについて、政府の説明はこうだ。福島第1原発1─4号機には1日約1000トンの地下水が流入し、このうち約400トンが原子炉建屋などに流入して、残りの約600トンの一部(推定300トン)が配管や電線を通す地下のトレンチ内の汚染源に触れ、海に放出されている。ただし、建屋の中に入り込んで汚染された地下水は、建屋周辺の地下水よりも水位が低いので外に漏れ出すことはない、という。
これに対し、産業技術総合研究所・地圏資源環境研究部門の丸井敦尚・総括研究主幹は、「政府や東電の説明は完全ではない」と指摘する。建屋周辺の地下水は約100メートルほど離れた海水の潮位変動を受けるため、建屋内の汚染水が地下水に混じる可能性があり得るためだ。
5月下旬以降、福島第1の海岸近くのエリアで高濃度の放射性物質の検出が目立ってきたが、丸井氏は「海岸べりが汚染されるルートは4つほどあると思っている」と話す。4ルートには東電などが説明するようにトレンチからの漏水を含む。その上で、同氏は最悪のシナリオとして、「あっては困るのが、メルトスルーが起きて、燃料が(建屋の)外側に落ちて直接地下水を汚染するパターンだ」と指摘する。
そのメルトスルーが起きている可能性がどの程度高いかについては、「観測データがないから技術者、科学者の立場では何とも言えない。ただ、可能性は十分あるので調べないといけない」と強調する。同氏は、「敷地の中の地下水の全体像を把握するためにも、観測井戸をもっと増やさないといけない」と述べている。
汚染水処理に絡む東電の対応について、経産省内に設置された「汚染水処理対策委員会」のメンバーである国土交通省・国土技術政策総合研究所の藤田光一・研究総務官は、「個人的な感想だが、危機的な状況の繰り返しだから、どうしても目の前に起きた事象への対処が中心になる」と指摘。「最前線での取り組みと並行して、余裕をもって全体を見る姿勢をもっと強めていかないといけない」と、東電に注文を付けている。
(浜田 健太郎 編集;北松 克朗)

2014年3月3日月曜日

「セシウム検査で判明した子どもの体内被曝の深刻度」という記事で、編集長を懲戒解雇

朝日新聞社は8日、「重大な就業規則違反」があったとして、同社子会社の朝日新聞出版が発行する週刊朝日の小境郁也編集長を解任、同日付で懲戒解雇処分にしたと発表。

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セシウム検査で判明した子どもの体内被曝の深刻度


関東15市町で実施されている最新検査で、子どもたちの尿の7割からセシウムが検出されていたことがわかった。ジャーナリストの桐島瞬氏は、その被曝の深刻度を明らかにする。

*  *  *
 入手したショッキングなデータをまず、ご紹介しよう。常総生活協同組合(茨城県守谷市)が、松戸、柏、つくば、取手など千葉、茨城の15市町に住む0歳から18歳までの子どもを対象に実施した尿検査の結果である。

「初めの10人を終えたとき、すでに9人からセシウム134か137を検出していました。予備検査を含めた最高値は1リットル当たり1.683ベクレル。参考までに調べた大人は2.5ベクレルという高い数値でした。いまも検査は継続中ですが、すでに測定を終えた85人中、約7割に相当する58人の尿から1ベクレル以下のセシウムが出ています」(常総生協の横関純一さん)

 検査を始めたのは、原発事故から1年半が経過した昨年11月。検査対象全員の146人を終える来年明けごろには、セシウムが検出される子どもの数はさらに膨れ上がっているだろう。

 セシウム134と137はウランの核分裂などにより生じ、自然界には存在しない物質だ。福島から近い関東の子どもたちが、原発事故で飛び散ったセシウムを体内に取り込んでいるのは間違いないだろう。副理事長の大石光伸氏が言う。

「子どもたちが食べ物から常時セシウムを摂取していることが明らかになりました。例えば8歳の子どもの尿に1ベクレル含まれていると、1日に同じだけ取り込んでいると言われます。内部被曝にしきい値はないので、長い目で健康チェックをしていく必要があります」

 関東だけではない。放射能汚染による体内被曝が、東海や東北地方にまで及んでいることも分かった。福島を中心に200人以上の子どもの尿検査を続けている「福島老朽原発を考える会」事務局長の青木一政氏が、実例を挙げて説明する。

「昨年11月に静岡県伊東市在住の10歳の男児、一昨年9月には岩手県一関市在住の4歳の女児の尿からセシウムが出ました。この女児の場合、4.64ベクレルという高い数字が出たため食べ物を調べたところ、祖母の畑で採れた野菜を気にせずに食ベていたのです。試しに測ってみたら、干しシイタケから1キロ当たり1810ベクレルが検出されました」

 食品に含まれる放射性セシウムの基準値は、1キログラムあたり一般食品100ベクレル、牛乳と乳児用食品50ベクレル、飲料水と飲用茶10ベクレルだ。ただし、基準そのものに不信感を持つ消費者も多い。検査もサンプル調査だから、東日本の食材を敬遠し、なおかつ1ベクレルでも気にする風潮につながっている。

 体内にセシウムを取り込むと、どういう影響が出るのか。内部被曝に詳しい琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏が解説する。

「セシウムは体のあらゆる臓器に蓄積し、子どもの甲状腺も例外ではありません。体内で発する放射線は細胞組織のつながりを分断し、体の機能不全を起こします。震災後、福島や関東地方の子どもたちに鼻血や下血などが見られたり甲状腺がんが増えているのも、内部被曝が原因です。怖いのは、切断された遺伝子同士が元に戻ろうとして、間違ったつながり方をしてしまう『遺伝子組み換え』で、これが集積するとがんになる可能性があります」

 矢ケ崎氏は、尿中に含まれるセシウム137がガンマ線だけ勘定して1ベクレルだとすれば、ベータ線も考慮すると体内に大人でおよそ240ベクレルのセシウムが存在し、それに加えてストロンチウム90もセシウムの半分程度あるとみる。

 体に入ったセシウムは大人約80日、子ども約40日の半減期で排出されるが、食物摂取で体内被曝し、放射線を発する状態が続くことが危険だと言う。

 常総生協が昨年度、食品1788品目を調査した資料がここにある。結果を見ると、280品目からセシウムが検出されていた。米74%、きのこ63%、お茶50%、それに3割近い一般食品にもセシウムが含まれていたのだ。

※週刊朝日  2013年10月4日号
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