2014年5月5日月曜日

4歳の時キエフで被曝したシネオカヤ・インナさんが、講演会で述べた日本の被曝被害者へのメッセージ(一部)

チェルノブイリ28周年企画「チェルノブイリ・福島 いのちは宝」4/26(三重県津市)での講演会から文字興し。

 汚染地された地区に住む皆さんには、たとえ一年に一度、ある一定の期間でも、汚染のないところで過ごすことは大切です。特に、子どもを保養に連れて行くことは、とても重要です。それぞれ皆さんには事情があることは承知しておりますが、それでも将来病気などに罹る可能性を少しでも減らすために、今子ども達を汚染の無いところにできるだけ連れて行くようにして欲しいと思います。

 皆さんの家族の何方かなどが何か病気に罹ってしまったとき、それは放射能と関係ありませんと言われるでしょう。でも必ず、かつて被曝をしたという悲しい記憶が蘇ります。そのときに、あの時あれをしておけば、こんなことにはならなかったかもしれないという思いに駆られるのです。ですから、自分は最善を尽くしたと思われるように、今できることは全力でやっておかなければなりません。原子力の事故は一生どこまでも容赦なくついて回るのです。

 放射能は土壌にしみこみ、植物に移ってゆきます。放射能に汚染された土地には、30年にもわたり何も植えてはならないのです。ですからどうか、できるだけ早く遠くに離れて下さい。もし家族全員が離れることが無理であれば、子ども達だけでも、せめて年に一度、数週間でも環境のきれいなところで過ごさせてあげて下さい。

 日本でも既に甲状腺の病気の子どもがいることを私は知っています。病気になってしまったお子さんを持つ両親の皆さんも、どうか絶望しないで下さい。闘って下さい。放射能の影響については、医者にとってもわからないことだらけなんです。言われるがままにならず、自分自身で行動し、調べて、最も適した治療法を見つけ出して下さい。

 子ども達に言いたいことは、どんな困難な中でも祈り、強い意志をもって欲しいということです。何かをしたい、または何かになりたいという、そういう強い意志をどうか持って下さい。夢を持って下さい。信念と強い意志があれば、それは必ず病気を治してくれると私は信じています。たとえ癌であっても、それに打ち勝ち、幸せな人生を過ごせるのです。

 私は原子力発電所を使ってはならないと考えます。チェルノブイリのような爆発がもう一度起きたら、どうなってしまうのでしょうか。残念ながら原子力の事故が起きたら、元に戻すことは不可能です。その被害は地球規模のものとなり、地域は破壊され、何万という人々が故郷を追われ、健康や命でさえ奪われるのです。

 私達のおじさんおばあさん達は、放射能や化学物質に汚染されていないきれいな土地を、遺伝子組み換えなどでない作物を、私達に残してくれました。近代科学の発展は、少数の独占的な資本家の富の為にのみ貢献しています。彼らはたった一世紀の間に人が住む地球を危険なものにしてしまったのです。私達はどんな土地を孫達に残すのでしょうか。

 日本の人々が最も安全なエネルギー源を探しだし、美しい自然と人々の健康を守っていくことを、私は信じています。私達は皆協力して、次の世代のために、この地球を残すために、できる全てのことをしていかなければなりません。



インナさんの妹、ヴィーカさんが、会場で読み上げた
母親からのメッセージ。
(チェルノブイリ子ども基金スタッフが綴る事務局さんより)

「原子力、それは人間にとって毒であり、
それに対する解毒剤は、残念ながらみつかっていません。
放射能は周りの環境から、
汚染された食べ物などから体に入り込み、
蓄積されていきます。
たくさん放射能をためてしまった人は、
病気になり、早く命を落とします。

人々に安全の補償がないまま、
どうして原子力発電所をつくることができるのでしょうか。
癌の治療も、放射能による病気の治療も
まだ見つかっていないというのに。
現代医学のすすめる「治療」というのは、
必ずしも人々が望むような結果はもたらさず、
それでいて、高額な治療費がかかります。

たとえ平和目的であっても、
原子力を使ってはならないと、私は確信しています。

ウクライナはたくさんの原発を造り、
ヨーロッパにきれいな電気を売っています。
一方で、私たちには放射能、病気、
放射能のゴミによって汚染された土地が残っています。
原発で働く人々は、
病気になったり、命を落とすかもしれないという危険の中で働いていて、
一方で、他の人々はこれによって安易に電力を得ている。
こんなことがあってよいのでしょうか。

放射能汚染の影響によって失われる命、人間の生活の価値について、
誰も考えていなかったのです。
あるいは、多くの人々が、病気になって、
治療のために高額な費用を支払わなければならなくなるとは、
誰も言いませんでした。

そして、生まれたばかりの赤ん坊にまで、
すでに深刻な原子力の負担を背負わせ、
死ぬまでその不安を持ち続けなければならない、
このような子どもの命の大切さについて、
誰も考えなかったのです。

この世界で一番大切なのは、人間であるということ、
特に子どもたちであるということを、
人々に理解してほしいと強く願います。

未来の世代にどのような地球を残すのか、
私たちの祖先が残してくれたようなきれいな地球を残すのか、
あるいは、何百年も何も植えることもできない、
有害で汚染された地球を残すのか、
私たちは考える必要があります。

みなさん、どうか自分たちを守ってください。
自分たちの豊かで美しい大地を守ってください。
みなさんは知恵のある人々です。
科学のあらゆる分野で、
未来への新しい道を大きく切り拓くことが出来るはずだと思います。

みなさんが原子力の問題について
正しい選択をしてくれると信じています。
どうか自分たちを、そして将来の世代を守ってください。
どうかお願いします。」

(インナの母 リディヤさんからのメッセージ)