2014年9月15日月曜日

【保存資料】 どうなる放射能汚染物の処理【4】“原発並み”の放射能抱える東京の下水道施設:廃棄物・リサイクル:ECO JAPAN −成長と共生の未来へ− 2011.8.2

下水道施設が放射性物質の集積地点となっている──。
 下水道が生活の場から放射性物質を取り除くという非常に重要な機能を果たしている反面、もともと放射性物質を取り扱う施設になっていないことによる外部への流出による“二次汚染”が懸念されている。


原発並みの放射能

 東部スラッジプラントの周辺を調査し、同プラントからの放射性物質の再飛散の危険性を指摘した神戸大学大学院教授の山内知也氏がとくに懸念していたのは下水道施設に集まる放射性物質の量である。

 「焼却灰で1kg当たり1万ベクレルとか2万ベクレル。それが1日に100t。(下水道施設には)すごい量の放射能があることになります。普通の研究室が持っているレベルじゃない。これは原発並みですよ」

 下水道施設に集まる放射性物質の量について、東京都議会議員の柳ヶ瀬裕文氏が試算し、6月24日に都議会で発言している。

 「東京都から提出された1日当たりの汚泥の量、焼却灰の量、そして放射能の量、こういったものを掛け合わせていくと、1日当たり、東京都全体の下水汚泥の総放射能量、これは約21億5000万ベクレルになります。焼却灰の放射能総量、これは17億6000万ベクレルなんですね」

 1日で約21億5000万ベクレル。これが東京都の下水道施設に集積される放射能量という。仮にこの状況が1年間続くとすると、7847億5000万ベクレルである。これほど大量の放射性物質が集積される場所は原子力関連施設以外ではまず考えられない。
 柳ヶ瀬氏の都議会での質疑の引用を続ける。

 「とてつもない量の放射能、放射性物質を扱っているわけですが、ポイントは、放射性物質は焼却してもどこかに消えることはないということなのです。その姿が気体になったり、固体になったりはするものの、トータルの放射能量、これが減ることはありません。つまり、この汚泥に存在した21億5000万ベクレル、焼却灰となって捕集した17億6000万ベクレル、この数字を引いた1日3億9000万ベクレル、これが行方不明となっているのです。どこに行っているかわからない。都は、この3億9000万ベクレルがどこに行ったのか、これを合理的に説明することができるのでしょうか」

 この質問に東京都の松田二郎下水道局長は答えなかった。3億9000万ベクレルの行方について、柳ヶ瀬氏が質疑の中でこう述べている。

 「大きな可能性としては、これは2つあります。排ガスとなって大気に排出されている、もう1つは、水処理によって溶けている、そのどちらかです」

 この行方不明の1日3億9000万ベクレルが施設外に出ているとしたらどうだろうか。大気中への1年間の放出量は1423億5000万ベクレルにおよぶ。これがどのような数字なのか。

 たとえば、青森県六ヶ所村に、原発から発生する使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出す六ヶ所再処理工場がある。この六ヶ所再処理工場が1年間に放出することを許されているのはヨウ素131で170億ベクレル、セシウム137で11億ベクレルである。これらを合わせた181億ベクレルに比べると、東京都内の下水道施設から放出される放射性物質は約8倍に及ぶのだ。

 施設ごとの試算でも、たとえば新河岸水再生センター(板橋区)では1日で約1億3700万ベクレルが行方不明となっている。年間で約500億ベクレルに達し、六ヶ所再処理工場の3倍近いとの結果が出ている。

 さらに調べていくともっと恐ろしい数字にいきあたった。それは東京都の下水道施設における放射性物質の放出量が原発並みであることを示していたのだ。以下に具体的に示す。

 今回の放射能汚染を引き起こした福島第1原発が1年間に放出する最大量として定められているヨウ素131の量は4800億ベクレル。柳ヶ瀬氏の試算からヨウ素131の行方不明分のみを取り出すと1日で1億4800万ベクレル。1年間では540億ベクレルとなり、福島第1原発の9分の1の放出量となる。

 福島第1原発には1号機から6号機まで6基あり、このヨウ素131の年間放出許容量は6基を合わせた値となっている。単純計算すると1基分では800億ベクレルとなり、東京都の下水道施設はその3分の2と原発1基分に迫る放出量となる。これは突如として都内に小型の商業用原発が1基出現したのと変わらないといってよいだろう。

 実は、柳ヶ瀬氏が試算に使った6月上旬の採取データかなり控えめなデータなのである。東京都が最初に汚泥や焼却灰の放射性物質を調べた5月中旬採取のデータで試算すると、汚泥中の放射能量が約33億ベクレル、焼却灰中の放射能量が約21億ベクレルで、行方不明量が12億ベクレル、1年間だと4380億ベクレルである。

 これは六ヶ所再処理工場の年間放出量の24倍に達する。福島第1原発とのヨウ素のみの比較でも、1年間で1314億ベクレル(1日3億6000万ベクレル)と原発1.6基分におよぶ。もはや原発並みどころか“原発超え”とすらいえるかもしれない。

 ちなみに都議会では、のちに柳ヶ瀬氏が指摘した放射能の収支が問題になった。理由は、(1)汚泥や焼却灰のデータが2009年度のものだった、(2)別の採取日で計算した場合、焼却灰の放射能量が汚泥の放射能量を上回ることがある──ことから、「根拠のない計算」で「都民の不安をあおるパフォーマンス」だと鈴木章浩議員が指弾したのである。

 これに対して柳ヶ瀬氏は「(1)は都が今年のデータを出していなかっただけで、(2)はむしろ測定データに問題があるのではないか」と反論する。

 実際に柳ヶ瀬氏が試算に使った2009年度ベースの下水汚泥や焼却灰の量と今回都が示した量を比較すると、2009年度データのほうが控えめな量となっており、都が示した直近のデータで試算し直すと、むしろ汚泥中の放射能総量は約21億5000万ベクレルから約23億3000万ベクレルへと増大する。行方不明となっている量は3億3000万ベクレルへと減るが大筋で間違っているわけではない。よって(1)は都がデータを公表したことにより、より正確になったことを喜ぶべきだろう。
 (2)の指摘のように収支が取れないことがあるのはたしかだが、これについては都も認めている通り、サンプリングの誤差や測定のタイミングなど様々な要因がからむ。それはデータに問題があるのであって、試算がおかしいとこの時点で責めるような話ではあるまい。こういう試算をすることが間違っているわけではなく、長期にわたってきちんとした試算をして収支をとることが必要なのである。

東京都は「99.9%以上回収」と主張

 質疑の中で都の松田下水道局長は、下水道施設周辺への二次汚染の可能性について次のように反論している。

 「下水汚泥の焼却によって生じる排ガスやその影響についてでございますが、排ガスは煙突から排出をされる前に、細かいちりなどを除去できる高性能フィルターなどに通しまして、その後、さらにアルカリ性の水によって洗うことで、固形物を99.9%以上回収し、焼却灰が施設外へ飛散することのないよう適切に管理をしております。水で洗った後の排ガスの成分を専門家に委託して測定をした結果、放射性物質は検出されておりません。このため、周辺環境への影響はないと考えております」

 このように東京都は実測した結果、問題なかったというのだが、どういうわけか調査結果が出てから1カ月以上が経つ7月29日段階でも、いまだにその測定結果を公表していない。筆者が入手した調査報告書によれば、測定をしたのは東部スラッジプラントの1号炉で、6月14日のことだ。その測定結果には放射性のヨウ素131のほか、セシウム134と同136、同137が「検出限界未満」となっている。

 ところが、この報告書を何人かの専門家にみてもらったところ、適切な測定ではないと口をそろえる。名古屋大学名誉教授の古川路明氏は「吸引空気量が4m3くらいで、測定が1000秒(約17分)ですか。吸引量も測定時間も短すぎます。この測り方ならどこでも検出限界以下ですよ」と驚いたように話す。
 測定条件をみていくと、排ガスは焼却炉から集じん機、洗煙塔、煙突と通り、施設外へと排出されるのだが、測定はこのうち洗煙塔と煙突の間にある窒素酸化物などの測定のためつくられた迂回路に捕集フィルターを設置し、ポンプで空気を引き込むことでフィルターに粉じんを吸着させる。この時は1分あたり24Lの排ガスを吸引し、3時間38分捕集した(計約3.9m3)。こうして採取した捕集フィルターをゲルマニウム半導体検出器という機械にかけて放射線を測るのだが、この計測時間が1000秒となっている。古川氏が続ける。

 「排ガスは量がものすごい多いわけですが、捕集用のフィルターに吸着する粉じんはきわめて微量で目方はほとんどありません。そういう微量なものですから採取も2~3日間ずっと吸引したり、測定も一晩くらいかけることも珍しくありません。少なくとも100m3、できれば1000m3くらいは(吸引量が)欲しい。ですからケタがぜんぜん違います。それにこんなに(ゲルマニウム半導体検出器で)短く測るのはよっぽど(放射線量が)高いものを測るときくらい。異例ですよ。恣意的とまではいわないですが、いい加減にやっているのは間違いない」

 京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏も同意見だった。
 「私たちは3月15日に東京都の空気を測定しました。その時どうやってやったかと言いますと、1分間に500リットルくらい、ハイボリュームエアサンプラー(という機械)で1時間吸引しました。『500L』かける『60分』ですから、3万Lの空気を吸引してその中に含まれている放射性物質の量を調べました。そのときはちょうど(風向きが福島から東京に向いていて放射性物質が)飛んできていた時なので、ヨウ素やセシウムがびっくりするほど含まれていました」
 「私たちが使っているのと比べると(吸引量が)20分の1くらいのもので、約3時間くらいしか(空気を)採ってない。本当ならもっともっと採るべきだと思うし、1000秒の測定というのは……。私なんかは環境の放射能の測定をずっとしてきた人間ですけど、原子力発電所の汚染を見つけようと思うと、1つの試料をゲルマニウム半導体検出器で1週間かけて測定する。1日が8万6400秒で、その7倍ですから60万秒くらい。(都の測定時間は)もう圧倒的に少なすぎる。もっとちゃんとした測定をすべきです」
採取量も、採取時間も足りない

 採取する量が少なすぎ、計測時間も短すぎる。となれば、まともな測定結果が出るわけない。それほどずさんな測定だったというのが専門家の見解である。
 この間、東京都は「下水汚泥焼却炉の煙突での放射性物質を測る方法について、公定法がない」としきりにこぼしている。経済産業省放射性廃棄物規制課によれば、「今回の事故のような事態は想定されていなかった」ため、下水道施設への放射性物質の流入は当然ながら想定されてこなかった。よって規制値がないのだという。 規制値すらないのだから測定方法など定められているわけがない。

 それ以前に、原子力関連施設における排ガス中の放射性物質の測定方法について法的な規定がないのだ。ダイオキシンや環境基準に定められている有害物質が法規制の中に測定方法まで明確化されているのに比べても、きわめて異例である。ほかの法制度から切り離して特別に管理してきたはずの放射性物質の測定方法が決められていないというのは明らかに国の不作為といってよい。その点で東京都に同情すべき余地はある。

 ただし、原子力安全委員会が1977年に決定し、2001年に改訂した「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」が標準的な測定方法を示している。そこには「測定下限濃度を満たすための代表的な測定条件」が掲げられており、ヨウ素131やセシウム134、同137については、「50L/分で1週間採取」とされ、ゲルマニウム半導体検出器の計測時間は「4000秒」とされる。

 東京都の測定法と比較すると、都の2倍以上の吸引量で、46倍となる丸1週間の採取をして、ようやく4倍の測定時間が許されることになる。ちなみにこの指針で求められる検出限界濃度は都の測定の100分の1近い。都はこの指針の存在についても知っていた。にもかかわらず、あえて指針よりもはるかに短い時間と少ない量のサンプリングとし、計測時間もずっと短くして測定した。これはもはや放射性物質が検出されないような測定方法を最初から選択した“放射能隠し”ではないか。

 改めて東京都下水道局に排ガス測定が適切だったか聞いた。
 「モニタリング指針に比べてどうだとかいう人もいるが、下水汚泥に当てはまる測定方法が明確でないので、そういうのも参考にしながら(測定方法を)決めた。私どもとしては国の通知で示されている濃度限界が唯一の基準と思ってますので、それ以下であれば、“いわゆる定められた基準以下”でクリアとなる。意図的に短くしているんじゃなくて、濃度限界があるなかでそれをクリアする方法を考えた。安全と定められている濃度限界があって、それ以下で検出されなかったわけですし、学識経験者に吸引時間とかガス量とか測定時間についても、きちんとお示しして評価いただいている。私どもとしてはそのやり方で妥当と考えている」(小団扇浩・環境管理課長)

 都は測定結果が出た6月21日から1カ月以上もこの結果を公表していない。その理由は「下水の煙突から測る方法について公定法がない。ですので実際にやった方法が妥当かどうか検証も必要。そういうことについて、大学の先生から見解などをいただいておりましたので時間がかかっている」(同)というものだ。

 その学識経験者による「妥当」との「評価」が具体的にどのようなものなのか。「やり方とかをお示しして妥当だという回答をいただいてる」(同)というだけで、報告書があるわけでも、なぜ妥当と判断したのかの説明もない。こんなことに1カ月以上かかったというのである。
 取材時、小団扇課長は「安心していただくために」と繰り返していたが、通常より厳しい測定条件で測って「だから安心してください」というならまだしも、はるかにずさんな測定方法で「安心しろ」といわれて納得できるひとがどれだけいるだろうか。

 ましてや東京都の下水汚泥焼却炉の排ガス処理設備は原子力施設に設置された焼却炉に比べて簡易なのだ。都によれば下水汚泥焼却施設の排ガス処理設備は、セラミックフィルター、バグフィルター、電気集じん機のいずれかの「高性能フィルター」に、アルカリ水を噴霧する湿式スクラバーという2段構成となっている。

 だが、これが原発にある放射性廃棄物の焼却炉の場合、前段にセラミックフィルターなどを採用するだけでなく、後段に「高性能フィルター」として、さらに微細な粒子も捕捉できる、ガラス繊維のろ紙を重ねたヘパフィルターを設置するのが当たり前である。柏崎刈羽原発のように前段のセラミックフィルターを二重にした上でヘパフィルターを設置するという3段構えも珍しくない。つまり、東京都のいう「高性能フィルター」を二重にし、さらに高性能なフィルターまで配置していることになる。それだけ都の設備は放射性廃棄物を扱うようになってないということだろう。前出・京大の小出氏はこう提言する。

 「トータルとして人々の被曝量を減らさなくてはいけない。やらなきゃいけないことはわかっていて、(焼却炉の)排気系にできるだけ出さない。そのためには性能の良いヘパフィルタを追加して設置するということをまずやるべきだと思います。それに普通の放射性物質を取り扱う施設であれば、排気のところからリアルタイムでまず測っていく。もう1つは長時間吸引して試料をとって長時間測定する。そういうやり方が必要だと思います」

 東京都は、計3カ所の下水汚泥焼却炉で測定を実施し、いずれも放射性物質は検出していないとの“安全宣言”を近く発表する。もし本気で都民の安全を考えるのであれば、こうした提言に耳を傾けるべきではないか。


2014年9月13日土曜日

東京における吸入被ばくの危険性と焼却場

三田医師は、講演会で、「東京はチェルノブイリより悪くなる予感がする」と発言し、その根拠として、「東京でやっていた経験から言うと、食べ物に気をつけているだけでは、とてもじゃないけど追っつかない。検査データが悪い人達の分布を見ると、ゴミ焼却とか下水の処理場とかとの関係がすごく密接だと思います。」と話しています。

東京とチェルノブイリではさまざまな条件が異なります。とりわけ、東京では、チェルノブイリでは決してやらない放射能に汚染された廃棄物の焼却を、人口の密集する地域で、何も危惧すること無く、継続して実施しているという事実があります。

東京のごみ焼却場の分布を示します。


これに、汚泥焼却をする下水処理場を加えると、(日の出の多摩エコセメント工場も含む)



三田医師の指摘通り、2年目の東京白血球異常の西への広がりは、多摩市から五日市に向かう南東ー北西の帯状の分布に沿って、多摩市清掃工場、八王子市北野清掃工場、八王子市戸吹清掃工場、あきる野市高尾清掃工場が、いずれも丘陵上に並んでいる。また、1年目の埼玉県境荒川沿いも焼却場の分布と発生状況が関連しているように見える。

(三田医師講演会より)


焼却場から出る煤煙の影響範囲は、一日当たりの焼却量、煙突の高さにより異なりますが、環境省の環境影響調査の基準によると、以下のような目安となります。 


例えば、八王子戸吹清掃工場の場合、煙突高59mで、影響範囲は3kmということになることが分かります。分布図下のスケールで、自分の家と焼却場との距離を測れば、どの程度影響があるのか推定できます。とりあえず、それぞれの煙突の高さなどは、調べてみて下さい。

処理場の煙突の高さは

煤煙の拡散イメージは(計算の例)



ごみ焼却場や下水処理施設から出た煤煙は、同心円状に広がるのではなく、風の向きに従って拡散するので、その地区の卓越風向は重要です。ちなみに八王子の卓越風向は下図のように、北西~西北西と南から南東の風が顕著であることが分かります。
あきる野、八王子から稲城市の方角に立ち並ぶ施設は、悪いことにこの卓越風の方向と一致しているのが気に掛かります。


2014年9月8日月曜日

原発事故後2回の放射性プルーム拡散 東京では?

 毎日新聞が記事にした資料から、東京について、3月15日と3月21日の大気のセシウム合計濃
度を整理すると以下のようになる。
 浮遊粒子についての測定値なので、ガス状のものは含まれない。また、降雨時には雨滴に取り込まれる(エアロゾルでは特に)ため、粒子性のセシウム濃度は低くなっている考えられる。
 3月15日は福島県で降雨、3月21日は首都圏で降雨が見られる。
 セシウムの形態は、主に、3月15日は粒子性、3月21日にはエアロゾルであったと言われている。


 原発事故後2回の放射性プルーム拡散(東京)   セシウムBq/㎥

葛飾区水元公園 3/15  9:00-10:00 130    3/21 9:00-10:00 175
青梅市東青梅   3/15 13:00-14:00 141   3/21 6:00-7:00      9.3
八王子市館町   3/15 12:00-13:00  38    3/21 8:00-9:00      9.6
川口町         3/15 13:00-14:00  97    3/21 8:00-9:00      9.5 (八王子市川口町か)
町田市熊ヶ谷町   3/15 11:00-12:00  47    3/21 3:00-4:00  11.3

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9771/24/tape_1.pdf


福島原発事故:1週間後にも放射性雲 東北、関東へ拡散 毎日新聞 2014年09月05日


 東京電力福島第1原発事故後、上空に巻き上げられた放射性物質の雲状の塊「放射性プルーム(放射性雲)」が、これまで知られていた2011年3月15〜16日に加え、約1週間後の20〜21日にも、東北・関東地方に拡散していく状況が、原子力規制庁と環境省による大気汚染監視装置のデータ分析から裏付けられた。1回目の放射性雲の影響で高くなった空間線量に隠れて、2回目の放射性雲が見逃されていた地域もあった。専門家は「データは住民の初期被ばく量を正確に見積もるのに役立つ」とみている。

 放射性雲の拡散はこれまで、「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)を使ったコンピューター計算に各地の空間線量や航空機による観測データを突き合わせて推定してきた。

 今回、環境省が各都道府県に設置している自動車の排ガスなどを常時監視する装置に着目。東京大大気海洋研究所や首都大学東京などに依頼し、大気中に浮遊するちりを1時間ごとに捕まえたろ紙を9都県約90カ所の測定局から回収して、3月12〜23日分の放射性物質濃度を調べた。

 その結果、福島市の一つの測定局では15日夜、放射性セシウム137と134の濃度が1立方メートルあたり最大計45.5ベクレルを計測した。16〜19日も、原発から放射性雲が出続けていた考えられるが、西風で太平洋側に運ばれたため、大気中濃度は上がらなかったらしい。その後、風向きが変わり、20日午後3時に同計104.1ベクレルに高まり、その状況は21日朝まで続いた。

 雨が降った15日は放射性物質が地表や家屋に沈着し、空間線量が1時間あたり20マイクロシーベルト程度まで急上昇したため、放射性雲が飛来したことが広く知られているが、雨が降らなかった20〜21日は、既に高くなっていた空間線量計の値が目立って上昇しなかったため、放射性雲が見過ごされてきたと考えられる。

 関東地方では、15日と21日の2回、帯状に高濃度の放射性雲の拡散が確かめられた。特に21日朝は茨城県南部や千葉県北東部で放射性セシウム濃度が急上昇。その後、東京湾北東沿岸部へと南西に移動した。その間、雨で沈着し、各地で「ホットスポット」と呼ばれる局地的に線量の高い場所を作ったとみられる。