東北大加齢医学研究所の福本学教授らのチームによる、福島原発の20キロ圏内で置き去りにされた牛の内部被ばく研究の英語論文「福島第一原子力発電所の避難区域に置き去りにされた牛における人工放射性核種の分布」の概要和訳
日本語の新聞記事はこちら。 http://t.co/vqAVV5c0 http://t.co/VrWsmZZ9 余談ですが、この論文を英語発信し、自分でも読んでいる途中でガンダーセン氏から論文のリンクを送って来ました。今読んでると返事をすると、すぐさま返事が来て、
「子牛と胎児での蓄積が母牛よりも多かったのは,成長が激しい細胞により多く取り込まれるからだ。しかし、ストロンチウムも検査してくれれば良かったのに!」と言われてました。しばらくすると、カルディコット博士からもそれに同意するメールが。海外でもこの論文は注目されていると言う事です。
福島原発事故後、2011年4月22日付けで20キロ圏内には3400頭の牛、31500匹の豚と63万羽の鶏が残された。5月12日には政府から福島県に避難区域の家畜の安楽死の指示が出た。福島原発事故後の放射性セシウムによる慢性被ばくのリスク評価の重要さが研究者によって指摘されていた。
動物モデルの慢性的バイオアッセイが存在しない事も強調されていた。避難区域に残された家畜のほとんどは個別の識別番号によって見分ける事ができるため、放射性核種への慢性被ばくの評価のための動物モデルとして理想的だろうと考えた。
放射性核種の生物動力学と内部被ばくの線量評価の基本的な情報を得るために、牛の複数の臓器におけるγ線放出体の人工放射性核種を測定し、臓器特異性と代謝を調べた。
2011年8月29日から11月15日の間に、合計79頭の牛を捕獲した。そのうち27頭は南相馬市で、52頭は川内村で捕獲した。63頭はメスの牛(3頭は妊娠中)、10頭はオスの子牛で3頭はメスの子牛だった。
γ線スペクトル分析では、セシウム134と137、銀110m、テルル129mの光電ピークが見られた。(図S1)コントロールとして使われた北海道の牛からは、どのピークも見られなかった。 http://t.co/cOLIXGPg
表 1は各臓器のカウント数から計算された、この4つの放射性核種の濃度である。測定値は全て、大放出が起こった2011年3月15日に減衰補正された。ここ ではCs134とCs137を合わせてCs137と言及する。 http://t.co/GZmRV2Ba
Cs137は筋肉組織での濃度が一番高かった。胸最長筋、大腿2頭筋と咬筋でのCs137濃度には統計学的差がなかったので、この3つをまとめて「骨格筋」と分類した。
回帰分析によると、末梢血液と臓器のCs137濃度の間には線形相関が見られた(図1)ので、臓器内の放射性セシウム濃度は血中濃度から推定できる事が示された。 http://t.co/F8UW7S99
牛は捕獲された区画によって3グループに分けられた。区画1と3は福島原発北の南相馬市で、区画2は南西の川内村だった。区画1の牛は原発事故後に畜舎の中に置かれ、放射性核種汚染がない牧草と放射性汚染がある雨水を与えられた。区画2と3の牛は放牧され、事故後に汚染された草を自由に食べた。
表S2は、区画ごとの、牛の臓器内におかるCs134とCs137濃度を示した。区画1と3は同じ市内であったが、餌の条件が異なった。 http://t.co/V03xQiTZ
区画2と3の土壌のCs137濃度はほぼ同じであった(表S3)。血中のCs137濃度は区画3が最大で、区画1(汚染牧草を食べなかった)が最小であった。これは体内に蓄積した放射性核種の濃度は主に餌の状態と牧場の地理的状況に影響される事を示す。 http://t.co/rXI3vIVv
母 体から胎児への放射性核種の移行は内部被ばくに関しての最大の懸念のひとつである。捕獲された3頭の妊娠中の牛の、胎児と母牛の放射性セシウム濃度の比較 は図2Aに示され、胎児の方が母牛の1.19倍であった。 http://t.co/BtUNIEzo
子牛の臓器内Cs137蓄積量は母牛の該当臓器と相関関係にあるが、母牛よりも濃度が高い。新生児と成人における水と電解物質の代謝はかなり異なるはずであり、餌のカリウム配合量が放射性セシウム濃度に影響を与えるかもしれない。この子牛達が摂取していた母乳と牧草の割合についてのデータはない。
このデータでは、甲状腺のCs137蓄積濃度は他の内臓よりも低かった。バンダジェフスキーは、放射性セシウムの蓄積は内分泌器官、特に甲状腺に最大に見ら れたと報告している。人間と牛の種族間の違いを考慮しなくてはいけないが、放射性セシウムは甲状腺癌発生にあまり影響がないと思われる。
ウクライナの汚染区域の居住者では、膀胱の尿路上皮の慢性炎症と増殖的な異型細胞の発達が報告されている。この研究では、膀胱におけるCs137濃度が比較的高かった。肉眼で観察する限り、膀胱に異常は見られなかった。
銀110mは核分裂生成物でないが、安定同位体の銀109の電子捕獲によって生成される。銀110mは、胎児以外の牛の肝臓で検出された。銀110mとCs137の比率は、土壌で0.5%以下、草で5%以下であった(表S3)。 http://t.co/jX7HB8cf
チェルノブイリ事故後の羊の肝臓での銀110m蓄積量と肝臓への移行係数は、Cs137よりも大きかった。なので、銀110mの肝臓への移行係数は、 Cs137よりも高いことが示される。銀110mの血中濃度と肝臓での濃度に相関関係は見られなかった(論文内6ページ目の図3B)。
ラットとネズミにおいては、銀は主にリソソームに関連した組織(リンパ節、肝臓、腎臓や中枢神経)に蓄積する。また銀は肝臓のクッパー細胞に集中して蓄積する。よって、肝臓は、銀110m蓄積の主要なターゲット臓器であると結論づけられる。
測定が原発事故の7ヶ月後だったにも関わらず、牛の腎臓内でテルル129mが明らかに検出された。テルル129mの半減期は33.6日と比較的短いので、腎臓は、テルル129m蓄積のターゲット臓器であると結論づけられる。
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原発事故後、大量のテルル132が大気に放出された。最初はテルル129mよりも多くのテルル132が避難区域の土壌で見つかった。テルル129mが腎臓に蓄積されると言う事は、福島原発事故直後に、テルル132もまた腎臓に蓄積した事を示唆する。
テ ルル132の半減期は3.2日で甲状腺に向性を持つヨウ素132(半減期2.3時間)に崩壊する。別の研究では牛に経口投与された放射性テルルがどの組織よりも甲状腺に多く蓄積したと報告されている。ヨウ素131と同じくテルル132も甲状腺リスク評価で考慮されるべきだと言う事を示唆する。
現在、様々な種族を代表する組織バンクを作るために、避難区域内での牛を含む動物の組織をさらに収集している。まず最初に、動物に蓄積された放射性核種の線 量評価をするつもりである。電離性放射線の影響に直接関連づけられるであろう病巣を探すために、解剖された動物の顕微鏡検査も行われている。
この研究は、福島原発事故後の牛における様々なγ線放出核種の臓器特異的蓄積についての最初の報告であり、公共衛生と放射線安全の改善に貢献するはずである。以上。(論文内の全てのセクションを訳したのではありませんのでご了承ください)
牛の臓器別のセシウムの分布の表を見ると、舌、肺、そして検体が少数だが脳、乳腺、子宮、甲状腺でも検出されたのが分かる。銀110mは検査された47の肝臓の47から検出された。そして、半減期34日のテルル129mが事故後6ヶ月後にまだ腎臓内に。 http://t.co/octTYwfb
確かにテルル129mの放出量は桁違いに多かった。そしてこれは半減期が1570万年のヨウ素129になり、ヨウ素であるからおそらく甲状腺へ行くのだろう。テルル132はテルル129mよりも多く放出され、半減期3.2日でヨウ素132になる。 http://t.co/Ni6anng0
この表では、汚染された餌を食べてない牛のセシウムの蓄積場所と蓄積量が少なかったのが一目瞭然に分かる。しかし、汚染された餌を食べなかった牛でも汚染された雨水を飲んでいただろうし、汚染された空気を吸っていた。 http://t.co/Le48nnub
【訂正版】銀110mは核分裂生成物でないが、安定同位体の銀109の中性子捕獲によって生成される。銀110mは、胎児以外の牛の肝臓で検出された。銀110mとCs137の比率は、土壌で0.5%以下、草で5%以下であった(表S3)。 http://t.co/jX7HB8cf
汚染された餌を食べてなくても、セシウムが吸入とおそらく雨水から取り込まれ、骨格筋、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓と子宮に蓄積された。南相馬市で捕獲された27頭の牛の中の何頭が畜舎内で汚染餌を食べなかったのか分からないが、1頭の牛の心臓のセシウムは川内村の放牧牛と同じ位の数値だった。
このひとつの心臓の検体の数値で、セシウムが心臓に溜まりやすいと言えるのかは分からない。汚染餌を食べた牛の心臓での蓄積量は最大ではない。しかし、汚染餌を食べなくても、呼気と水だけで十分に筋肉、心臓と腎臓にセシウムが溜まり、牛によるセシウムの取り込み方が人間と似ているとしたら・・・
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